※この記事は「僕のヒーローアカデミア No.281 PLUS ULTRA」のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
父の「ヒーローというのはな…他人をたすける為に」「家族を傷つけるんだ」から自分の言葉を紡ぐ死柄木。
これを聞くに弧太朗さんの憎悪はしっかり息子に受け継がれてるなあ…彼自身は想定しなかった、最悪の形で。父子の憎悪が重なった言葉だからこそ、戯言と一蹴できない重みがある。
死柄木の言う「守れなかったモノ」は彼自身──即ち転孤のことであり、またエンデヴァーにとっては燈矢兄のことかもしれません。
家族というワードを出されちゃ嫌でも意識しちゃうよなあ。死柄木自身は意図してなくとも、その言葉が全てエンデヴァー個人を糾弾する内容に聴こえてくる。
「見ないフリして傷んだ上から蓋をして──」も妻や子供たちに向き合わなかった彼のことに聴こえるんですよ。
その結果No.2、そしてNo.1という現在の地位を「浅ましくも築き上げてきた」。悪い見方をすれば今ここに向かってる荼毘に制裁を加えられる…そんなフラグにも受け取れる。
救けを求めて彷徨う転弧を拒んでしまったお婆さんのことは責められない…けれど、一方で仕方ないで済ませちゃいけない問題なのも確かだよな…。
これに関しては天晴兄さんの「迷子をみかけたら迷子センターへ手を引いてやれる」「そういう人間が一番かっこいい」が本当核心突いてる。
「小さな」「小さな積み重ねだ」はNo.236でもあった言い回しです。
急に悲劇が訪れるのではなく、負の要素が少しずつ積み重なった末に崩壊する…ってのが生々しいというか、嫌な現実味あるんですよね。
だから死柄木のこともただのヴィランと切り捨てられない…思わず肩入れしてしまう。
ヒーローを「マッチポンプ」とは言い得て妙。要はヒーローが市民を助け、その度に市民は守られることに慣れ、その市民をまたヒーローが助け…の繰り返しってことだよね。
永久期間が完成しちまったなアア〜!!と茶化す気にはなれないっすね…痛烈な批判だと受け止めることしかできない。
「守られる事に慣れきったゴミ共」は個々人が武力として"個性"を用いる社会を目指す解放軍と対極に位置する状態なんですよね。
そういう意味でも死柄木は解放軍の思想と相性がいい。転孤があのとき救われなかったのは街行く人々が守る役目を押しつけ合ったから…と捉えられますし。
「おまえたちの築いてきた全てに否定されてきた」「だからこちらも否定する」否定、否定、否定____…そんな人生で唯一肯定を与えてくれたのがAFOだったと。
死柄木の過去を知ってると軽々しくその気持ちを否定する気にはなれないな…。社会全体が彼を追い込んだ事実はもう否定できない。
否定され続けて漸く他者に肯定された…って点ではデクと一緒なのもまた辛い。幼馴染に、母親に、周りに夢を否定されてきて、やっとオールマイトが肯定してくれた。
だからこそ今こうして対立してる構図が皮肉に感じてしまう…。無個性のヒーロー志望って出発点は同じだったのにな…。
ヒビだらけの体で主張を述べる死柄木の悍ましさよ…。単に恐ろしいだけじゃない、どこか神聖さすら感じさせる迫力があります。
不気味なのにある種の美しさがあるといいますか、暗い背景でただ立ち尽くす姿に荘厳さを感じる。吹き出しを消せばそのまま一つの絵画になりそうな雰囲気だ。
「理解できなくていい」「できないから」「"ヒーロー"と"敵(ヴィラン)"だ」は至言。もしデクが理解を示すとしたら、やはりそれは死柄木の過去を知った刻なんだろうか…。
少なくともジェントルとはその立場の違いを超えて解り合ってましたし。ただ今はそうなる未来が全然浮かばねえ…。
いきなり死柄木に炎を浴びせるエンデヴァー。「わざわざインターバルをどうも!!」からして演説中に攻撃しなかったのは炎で熱の篭った体を休ませてたからだったのね。
この辺にも合理的な理由を用意してるのが本作らしいな…いや説明されずとも別にツッコむ気は起きなかっただろうけど。
炎を回避した死柄木____を背後から捉えたグラントリノ!ナイスカバー!
マイクや幼馴染を崩壊寸前で救った件といい、今回の作戦におけるこの人の貢献度ほんと凄まじいよな…ご老体なのに無理をなさる。
「轟の火力が下がっとる」ってセリフからも皆疲弊してきてるのが伝わってくる…。
しかし機動力は充分でも重量が足りなかったのか、あえなく反撃に…。骨折を表したようなボロボロのグシャって擬音が痛々しい…思わずその音を脳内再生してしまうほどの衝撃です。
脚から空気を噴射するグラントリノにこの負傷は致命的だろうな…まるで玩具でも壊すような呆気なさだ。
その後のコマで相澤先生は変わらず目を見開いてたから、この攻撃は素の怪力によるものだよね?
もし「崩壊」が発動してたなら全身にヒビが走ってるはずだし。何より先生やマニュアルさんが凡ミスしたとか考えたくねえしな〜。総合的に考えて相澤先生が瞬きした可能性はないでしょう。
思い出される別れの記憶…。菜奈さんは手紙を遺してたからてっきり黙って息子の元を去ったのかと思ってたんですが、一応お別れはしてたのね。
それが判っただけでも少し安心した…いや泣いてる弧太朗さんを見たら軽々とそんなこと言えないですけどね!幼い子供にはあまりに辛すぎる…。
近くの建物の屋上には若き日のグラントリノの姿も。
これもまた辛い光景だよな…弧太朗さんを守る為にはヒーロー・志村菜奈との繋がりを全て断たなきゃいけない、だから戦友であるグラントリノも姿を見せられないと。
彼もまたただの母親としての菜奈さんには一切関われないんだな…と。
「戸籍からも追えないように細工した」らしいけど、結局特定されて孫が敵堕ちしてるのが現状なんだよな…。
となると、弧太朗さんが預けられたこの児童養護施設が実は殻木の管轄下だったとか…?奴が(恐らく有用な"個性"発掘のために)福祉施設を開設してたのは既出の情報ですし。
本人によると殻木が論文を発表し失踪したのは70年前。
弧太朗さんが亡くなったのが16年前、享年32歳ってことは…彼が施設に預けられたのは大体30〜40年前。
その時期にすでに殻木の管轄の児童養護施設があっても矛盾はしません。その線で菜奈さんの息子と特定された可能性は考えられる。
まあ以後転弧オリジンまでAFOからの接触は一切なかったみたいだし、預けられてすぐに菜奈さんの息子と特定された訳じゃないのかな。
もしAFOがそれを知ってたなら嫌がらせに利用せず放置してたのが不自然だし。施設が殻木の管轄下だった説は今は可能性の一つに留めておくべきか…。
グラントリノの名前が「空彦」なのはNo.0(『2人の英雄』特典冊子Vol.O収録)、フルネームはウルアナが初出です。
自分に子供はいなかったと言い聞かせる菜奈さんが悲痛すぎる…。徐々に歪む吹き出しがその声の震えを表現してるのね…これはアニメでの声優さんの演技に期待がかかる。
堰を切ったように泣く菜奈さん…そら息子を無理やり遠ざけて辛くない訳ないよな…。今まで力強いお師匠の印象が強かったから余計にしんどい。
ヒーローじゃない、ただの一人の女性としての一面を見せつけられた。グラントリノは彼女がこういう素顔を唯一見せられる相手だったんだな…。
ここからは憶測ですが…グラントリノ、菜奈さんのこと好きだったんじゃないかなあ。もちろん単なる男女の絆で済ませられる描写ではあります。
けれどそこに異性として意識する気持ちが全くなかったとも言い切れない。そもどちらか断定を試みること自体野暮な行為かもしれませんが…。
ただその場合、この光景がますます複雑なものになるよな…。自分の恋心は胸に秘めたまま、他の男と子どもを儲けた女性の苦しみに黙って寄り添う…って、グラントリノがしんどすぎるよ…。
何言ってんだこのCP厨と言われようと、僕の脳内ではすでにそういうストーリーが出来上がってる。
グラントリノに振り下ろされた決定的な一撃。「俺たちの選択は───…」の後にこの光景を見せられるともうね、菜奈さんの選択は最初から間違ってたと突きつけられてるようで辛すぎる…。
結果的にとはいえ孫がこんな重すぎる業を背負ってしまって、もう何が正解だったか解らねえ…。
物語的にはもう役目は果たしたしここで退場しても違和感はないですけど、あんな回想された後じゃ当然生きてほしくなってきますよ!
菜奈さんが託した弟子のさらにその弟子、デクが一人前になるまで生き延びてくれ…!グラントリノにはその目で見届けてほしいものがまだ沢山あるんだ…!
激昂して死柄木に突撃するデク____に続くかっちゃんが何気に救いですね…。主人公のデクが動揺してるからこそ冷静な彼の挙動に安心を覚える。
OFAを知りながらもその関係者との関わりは深くないからこその感覚といいますか。グラントリノが瀕死の今こういう動きをしてくれるのは有難い。
ポケットの壊理弾を手にした後、相澤先生目掛けて突っ込む死柄木。
確か銃は持ってなかったはず(大規模崩壊で壊れた?)だから素手で直接ブッ刺すつもりか…?
通常は銃で撃ち込まないと効果ないとしても、今の死柄木には怪力が備わってるからな…弾速以上の速度で刺せてもおかしくない。
すかさず掴んで進行を阻んだリューキュウGJ!こういうとき巨体かつ俊敏だと障壁物としてシンプルに有用だな…!
掌に死柄木の腕が刺さってる?っぽいのがクッソ痛々しい…そんな状態で暴れられるとか拷問すかこれ。無理やり動かされる巨大な両手からその怪力っぷりが伝わってくる…。
「おまえだけは許さない」vs「俺は誰も許さない」。人に恵まれ初めて他者に強い憎しみを抱いたヒーローと、人に恵まれず全てを憎んで生きてきたヴィラン。
ここも後継者同士としての対比だよなあ…死柄木の返しが痛烈すぎる。精神面でも今はまだ死柄木の方が一歩先を往く感じか。
「怒りを…!!力に!!」と意識するデク。
初めて黒鞭が暴走した時のきっかけもかっちゃんをdisった物間くんへの怒りでした。その制御こそ継承者たちの"個性"を習得する秘訣とラリアットさんも語ってる。
つまり今の死柄木を抑えるほどの力もグラントリノを傷つけられた怒りが源と言えます。
拳を握って迫るエンデヴァーかっけー!…と同時に、その横で淡々と描写される死柄木の動作が不気味でもあります。
「振り絞れ!!」「振り絞れ…」とセリフは一緒なのに印象が違いすぎる。同じなのは標的(死柄木/相澤)に「もう一発!!」「あともう一発撃ち込められれば」って勝利条件だけ。
右手をポケットに伸ばしまた壊理弾を取り出す死柄木。
えーとつまり、今死柄木は左右に一つずつ弾を握ってる状態?
リューキュウの掌に空いた穴から覗いてるのは左手だよね?一発は外しても大丈夫…とはいえ、リューキュウ&デクに拘束されたままこの距離から当てるのは正直無理じゃね…?
そも弾を撃ち出すための銃すら未だに確認されないんですよね。仮にあったとしても今の拘束された状態で弾を装填するのは至難の業。
とすると…まさか指で弾き飛ばして相澤先生に当てるつもりなのか…!?いやそれこそ無理ゲーだろう!少なくとも薬指と小指しかない左手では絶対無理。
けれど万が一先生に向けて弾が撃たれた場合、被弾を防ぐ術があるとしたら…側にいるロックロックさんがミリオの如くその身を盾にする、とかでしょうか。
八斎會制圧に参加してた彼なら何が撃たれたか察して動けそうだし。もちろん本音は誰も犠牲にならずに済んでほしいんですけどね…。
ただ右手の一発を何とか防げたとしても、左手にまだもう一発残ってるからなあ。
こちらは薬指と小指しかない+リューキュウの掌に嵌った状態とはいえ、こうして描写された以上不発に終わるとも思えない。
一発目が先生に当たり、二発目は他のヒーローに向けて撃たれる可能性だってある。
悪い方向にばかり考えてると気分が沈む一方だから前向きな予想もしてみよう!お茶子飯田轟梅雨口田といった他の避難誘導組が駆けつけるって展開はどうだろう。
壊理弾を喰らう寸前で教え子たちが救けてくれる…とかいかにも王道ですし。そのくらいの希望を持って次回に臨みたいぜ…。