※この記事は「僕のヒーローアカデミア No.302 火の不始末 後編」のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
焦凍と他の兄弟を隔離すると述べるエンデヴァー。前回も言いましたが、彼がこういう選択をしたのは燈矢が焦凍くんを襲おうとしたからだったんだな…。
子の身の安全を優先する親としては当然の判断。ただ妥当ではあってもそれだけでは不充分な対処であることは否めないかなあ。
燈矢の特攻の顛末はキンクリ。エンデヴァーの服の左袖が焼けてるから彼が防いだのかな。腕自体に焼け跡はないから自分の炎で相殺したとか?
幼い弟が兄に火傷を負わされる結末にならなくて安心した…いやまあこの後母親に煮え湯を浴びせられる最悪の展開が待ってるんですけど。
作中屈指の湿っぽいシーンなのに寝てる焦凍くんのクソデカ鼻提灯で笑っちゃうぜ!鼻提灯にまで「氷結」が及んでる…
この時点で無意識に発生するほど高性能な"個性"ってことか。前回ラストにも見られた例の表情のせいで妙な太々しさを感じるな…良い意味でシリアスブレイカー。
「ヒーロー?」「逃げてるだけじゃないの…」言うなあ冷さん!彼女って夫の言うことには黙って従う印象だったんで、ここで言い返したのはかなり意外でした。
実際正論だけどじゃあどうすりゃよかったんだ…とも思うからなあ。よう言うた!みたいなテンションにはなりきれない。
5年後、燈矢(13)・冬美(12)・夏雄(8)。冬美さんはVol.21のプロフでは22歳、かつ今は誕生日(12/6)を過ぎてるので現在23歳。
彼女と一歳差の燈矢も誕生日(1/18)は過ぎてるから荼毘は今24歳か。
学ランを着た遺影から死んだのは中学生以上と予想されてましたが、今回で漸く確定と。
燈矢の自室ではヒーローのフィギュアらしきものを確認。やはりヒーローへの未練はまだ断ち切れてないようで…
机の上のPCもヒーロー関連の情報を調べるために使ってたのかな。あるいは"個性"に関する分野を勉強してた、とか。その体質を克服するための知識を検索してたのかも。
その後の3コマはNo.39「轟焦凍:オリジン」でも見たもの。
同じ光景でも前後の流れを知ると印象変わりますね…そりゃ弟を襲おうとした長男を近づかせられんわ。
まあ何の非もない夏兄や冬美さんは気の毒ですが、こうして頑なに接触を禁じるに至った経緯としては充分に納得できる。
「兄さん(アレ)らはおまえとは違う世界の人間だ」もまた違って聴こえるよなあ…。燈矢には焦凍とは違う世界=ヒーロー以外の世界も見てほしいって意味に取れる。
無論酷い言い方なのは事実だし、事情を把握してない焦凍くんには残酷な言葉ですが、それだけじゃないのも確かだ。
夏くんに恨み言を垂れ流すシーンはゴメン、変な笑い出ちゃったよ!何この胡散臭さ!?「泣いて縋ってた」って言い方からしてもっと悲壮なものかと思ってたんすよ、
そしたらこんな芝居がかった感じだとは…!いやでも燈矢=荼毘らしくはある、暴露動画でもこんなノリだったし。
一応「あの時は俺が悪かった」「焦凍に罪はなかった」と理解してるのは救いですかね、あの一件で弟を逆怨みするほどは堕ちてない。
吹き込んでる内容も完全な間違いとは言いきれません。ただこれで夏兄が必要以上に父を憎んでしまったと思うと…やはり罪深い行為ではあるなあ。
「家の女は皆だめだめなんだ!」を聞くに、同性なのも失敗作として夏兄に共感を寄せる理由にあったのかな。
まあ冬美さんが産まれたのは燈矢に冷さんの体質が生じる以前なんで、経緯を知る彼女に父親の悪口を言っても同意を得られないのは当然だし、そこに性別は関係ないけど。
「友だちなんかいらない!世界が違う!」は以前言ってた「連合も死柄木も」「最初からどうでもいい」を思い出す台詞。
これも同一人物である事を裏付ける発言だよな…荼毘と化した今も他人に関心はない、興味の対象はお父さんただ一人と。この頃からその姿勢に全くブレがない。
「本当にヒーローになりたいの?」は目から鱗な発言。確かに燈矢ってヒーローそのものへの憧れを語ったことはないような…。
まあ俺はヒーローになりたいんじゃない、お父さんに見てほしいだけ→それならヴィランでもできる…と考えて荼毘と化したなら皮肉と言う他ないですが。
母親を睨む燈矢の目はかつて父親がオールマイトに向けたそれにソックリ。
これまでヒーローを目指してきた燈矢の存在意義を揺らがす指摘だもんな…そりゃこういう反応にもなる。歪み方まで親父に似やがって…!と嘆くしかないです、こんな病的な面ばかり一致するとか歪すぎる。
「おばあちゃん達が貧乏してたからお母さんを売ったんだろ」は間違ってはいないけど悪意ある捉え方。子供に出生の経緯をこうも霰もなく言われちゃあさ…
そりゃ言葉を失うしかないよと。「おじいちゃん達」と言ってないことから婚約時にはもう冷さんの父親は逝去してたっぽい?
「お母さんも」「加担してんだよ」はまるで犯罪のような言い方だな…まあ実際禁忌と言える行為なのは確かですけど。
とはいえその事実がここで燈矢を引き止めなくていい理由にはならなくて。冷さんだけの責任ではないけれど、仕方ないでは済ませられない過ちだよなあ…これは。
燈矢in瀬古杜岳。「早生まれの小さな身体に漸く訪れ始めた二次性徴」はナレーションだから疑うべきではないのかな。
今まで弟の夏雄より身体が小さかったことに特別な理由はないと。そして"個性"が身体機能の一つなら、その発達が身体の変化と共に行われたのも不自然ではない。
「感情の昂ぶりが火力に直結する」のが事実なら、焦凍くんの「憎しみの炎」も単なる比喩じゃなかったのかな。
つまり父親に対する憎しみが弟の火力を上回るほどの炎を生み出したと。逆に彼が火力勝負で荼毘に押し勝つためには兄を救けたいって感情を昂らせる必要があるのかな。
涙が出るほど昂った感情…その正体が父親に見限られたと感じた悲しみだとすれば、燈矢を諦めさせるために取ったエンデヴァーの行動が、
逆にその火力を上昇させてしまったってことになるな…。あまりに皮肉すぎてもはやその因果に感動すら覚えるレベル。エン虐ここに極まれり。
蒼くなった炎を父親に見せたがる燈矢。「俺をつくって良かったって」「思うから!」のコマは前々回の回想でも描かれたものですね。
冷さんの体質の特徴である白い髪を毟ってるのがまた辛い…目に浮かべた歓喜の涙も悲痛なものに感じてしまう。あまり父親に執着しすぎててなあ。
燈矢を止めなかった妻を責めるエンデヴァー。No.2ヒーローゆえに家を空けてたのは仕方ないにしても、冷さんだけにその責任を押しつけるのは違うよなあ…。
とはいえじゃあどうすればって話でもあるんで本当に難しい。少なくとも一方的に責め立てるのが正しいとは思わないけど。
幼い焦凍くんが泣きながら父親に抗議してる姿がしんどいですね…彼はただ純粋に母親を守りたかっただけなんだなって。
そりゃここだけ見ればお母さんを虐めるただのクソ親父って印象が形成される。こうした積み重ねで初期のガンギマリ時代に至ったんだな…って納得があります。
夏兄や冬美さんが別の部屋で震えてるのもまた辛い描写。最高傑作である弟すら「焦凍は出てろ!関係ない話だ!!」とか言われてたらさあ…
そりゃ遠ざけられてた自分たちはもっと関係ない、救けに入っても無駄と思っちゃうよね…。まだ子供の彼らが動けなかったのは責められない。
唯一安心したのは「選んで進んだのは私の足で」「せめてその先では笑っていようと思っていた」と冷さんが自分の選択を肯定できてた事ですね。
この独白で全てが解決した後の和解√も僅かながら望めてきた。夫を最初から全力で拒んでなかったならそういう結末もあり得るよなと。
瀬古杜岳で泣く燈矢。「出るな…!涙なんか…」は八斎會編のデクの「ヒーローは…」「泣かない…!」を思い出すセリフ。
そんな彼を「ヒーローも泣く時ゃ泣くだろ…」と励ましたのは焦凍くんであり…。
燈矢にはそんな言葉をかけてくれる存在がいなかったのがまた残酷な対比。
目から涙の様に溢れたのは蒼い炎。これも昂ぶった感情=お父さんが来てくれなかった悲しみの表出だとすれば、この火災の原因もエンデヴァーってことになるよな…
どこまでも彼に罪を背負わせてくる。もし瀬古杜岳を訪れて燈矢の涙を止められてたら…なんてifを想像してしまう。
涙腺が焼けて泣けなくなったのもこの時なのかな。
だとしたら「出るな…!涙なんか…」に最悪の形で身体が応えたことになる訳で…あまりに酷すぎる。
最終決戦にて父親や弟と再度対決し、その果てに心が救われた時は、血ではない本当の涙を流す荼毘=燈矢が見られるんだろうか。
「火力の上げ方しか教えてくれなかった」のは冷さんの体質やら焦凍の存在やらを抜きにしても疑問だな…火力の調節はプロとしてやっていくなら必須スキルでは。
自分以上の火力を有してたなら尚更教えておくべきだよなあ。今まで特訓中はどうやって消してたんだろう、自然消滅?
4期後期ED『Shout Baby』の轟家パートにある謎の一枚の写真は瀬古杜岳の火災を捉えたものと以前予想しましたが、
この燃え盛り様はいよいよ信ぴょう性を帯びてきたな…。誰が撮ったものかは不明ですが、もくもくと昇る煙に謎の丘…今回描かれた火災の様子と大体状況は一致する。
この回想を見る限り、AFOや殻木の干渉は感じられませんね。正直ここまでエンデヴァーが罪を背負わされてると部外者の関与はない方向に進んでほしくなってきたな…。
父と子のすれ違いが招いた悲劇として完成度が高すぎて、轟家内部の物語としての純度を保ってほしくなってきた。
焦凍に傾倒した炎司、煮え湯を浴びせた冷…に比べれば子供である夏雄や冬美の責任は軽いもの。ただその点は「全部あんたが始めた事で」「あんたが原因だ」と
夏兄が言ってくれたので気にならないかな。少なくとも親である炎冷が子供を己の罪に巻き込んだ…って印象はないです。
「焦凍に盛り蕎麦をご馳走してやれてたかもしれない」って台詞がいいですね!ささやかながら各々の罪の告白で重くなった空気をいくらか軽くするもの。
焦凍くんの好物が蕎麦だと夏兄が知ったのって割とつい最近だもんな…。思わず燈矢も一緒に皆で蕎麦を啜るifを夢見ちまうよ。
「心が砕けても私たちが立たせます あなたは荼毘と戦うしかないの」は夫にも自分にも厳しく、真摯に自分たちの過ちと向き合ってることが伝わる言葉。
その凛とした表情から一緒に罪を背負う覚悟が伺えます、やつれたエンデヴァーとは対照的。そりゃ別人かと疑いたくもなるわ…。
冷さんが持ってるのはお馴染み「正義」「悲しんでるあなたを愛する」の花言葉を持つリンドウ。
これはきっと彼女なりの夫へのアンサーでしょう。悲しみをあなたと共有し、あなたと正義を遂行する…そんな決意の表明に取れる。このリンドウの花が彼ら家族の覚悟を象徴してます。
家族を繋ぎ止めた轟家のヒーローは焦凍くん、そしてその轟くんをヒーローにしたのは言うまでもなく…!
名前を出さずとも最後に主人公の存在を際立たせる流れは正しいです、やはり作中において最も崇高なヒーローは我らがデクなのだと思い知る。だから早く起きてくれー!頼む!
焼けた喉で父親に語りかける轟くん。No.298でその表情が曇った時はどうなるかと思いましたが、今回その展開を回避できて本当によかった…!
そうよ、子供であり被害者でしかない彼が独りで負担を抱え込む必要なんて全くないのよ…!冷さんがそれを示してくれて心から安心した。
冷さんの言葉と合わせると戦わなきゃいけないのが「荼毘」で、止めに行くのが「燈矢」なんだな。大量殺人者である事実を重く受け止めつつ、
自分たちの家族であることも忘れない、厳しくも情を感じる表現。せめて心は救われてほしい…そんな希望を荼毘に抱けるやり取りだった。
病室の外にはホークスとジーニストの姿が。彼らはNo.299で赴いた母親の邸宅から戻ってきた後なのでしょう。
冷さんたちが父親としての轟炎司を支えるように、ヒーローとしてのエンデヴァーはホークスが支えていくことを期待させるヒキ。これで再びNo.1&2として並び立てるな…!